ものごとを整理して考えるとき、絵を描いて整理した方が分かりやすいことがある。
数学でも、集合の関係を図で表す方法がある。
それが「ベン図(Venn diagram)」。

円や四角形などの閉じた図形で、集合の関係を視覚的に表現することができる。
考えるすべての要素を含む全体集合\(U\)は四角形、その中の部分集合は円で表す。
たとえば、
\(U=\{\)10未満の自然数\(\}\)
\(A=\{\)偶数\(\}\)
\(B=\{\)3の倍数\(\}\)
のとき、ベン図で表すと

こんな感じになる。
形から集合の関係を整理できるのがベン図の良いところ。
ベン図(Venn diagram)という名称は、19世紀のイギリスの数学者ジョン・ベンさんにより考案されたことが由来となっている。複雑な関係でも円を重ねるだけで可視化できるため、いまでは論理学・統計・情報科学の定番ツールになっている。

記号を使った集合の式も、ベン図を描くと「含まれる」「重なる」「外にある」といった関係が目に見えて分かりやすい。

\(A\)は\(B\)に含まれる。

\(A\)かつ\(B\)。

\(A\)または\(B\)。

全体集合\(U\)の要素のうち、\(A\)に属さない要素全体。


色の三原色における混色の考え方で、それぞれの色がどのように重なるとどんな色になるのかを、ベン図によって視覚的に捉えることができる。
加法混色では「Red・Green・Blue」を光の三原色とし、これらを混ぜ合わせると光エネルギーが加算されて色が明るくなっていく。
たとえば、スマホやパソコンなど光を使う画面で利用される。
減法混色では「Yellow・Magenta・Cyan」を色材の三原色とし、これらを混ぜ合わせると光エネルギーが減少して色が暗くなっていく。
たとえば、ポスターや雑誌などインクを使う印刷機で利用される。
加法混色と減法混色を表す図が集合なのかどうかは考える余地あり。
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| 集合と集合の関係を図で表したもの | |
| 範囲がはっきりしているものの集まり | |
\(a∈A\) |
\(a\)は\(A\)に属する \(a\)は\(A\)の要素 |
\(U\) |
すべての要素をまとめた集合 |
\(A⊂B\) |
\(A\)は\(B\)に含まれる \(B\)は\(A\)を含む |
\(A∩B\) |
\(A\)かつ\(B\) |
\(A∪B\) |
\(A\)または\(B\) |
\(\overline{A}\) |
全体集合の要素で、集合\(A\)に属さない要素全体の集合 |
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ベン図は、集合の関係を図で整理できる便利な道具。
数式だけではつかみにくい関係も、図で見ると捉えやすい。
部分集合・共通部分・和集合・補集合といった基本的な集合の関係は、ベン図さえ描ければ比較的簡単に理解できる。
集合の学習でつまずきやすいところほど、ベン図を描いて整理すると理解が深まりやすい。
抽象的な数式をベン図で可視化することで多少は具体化できる。
図としてイメージできること自体が、数学の強い武器になる。
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