グラフの移動には「平行移動」とか「対称移動」とか「回転移動」がある。
前回の2次関数のグラフの平行移動で平行移動のやり方が分かった。
今度は2次関数のグラフを対称移動させてみる。
グラフの対称移動を理解するために、まず対称移動が何なのかと、点の対称移動を考える。
そもそも対称移動って言うのはなんなんだっていうお話。
対称移動とは、平面の上にある図形の各点を、直線とか点に関して対称な位置に移動させること。
対称移動には種類があって、対称の軸を線として線対称な位置に移動させる対称移動(線対称移動)、対称の中心を点として点対称な位置に移動させる対称移動(点対称移動)がある。
他にも、3次元のグラフで面対称に移動させる対称移動(面対称移動)とかがあるけど、今は「そうなんだぁ~」ぐらいで。
あと、対称となった線とか点から移動前と後とで同じ距離になるのが特徴的。
線対称の基本は\(x\)軸対称と\(y\)軸対称。
例えば、\(y\)軸で対称移動せると、
こんな感じになる。
ちょうど対称軸で折り返す感じ。
これが線対称移動。
点対称の基本は原点対称。
原点を中心として対称移動させると、
こんな感じになる。
これが点対称移動。
点対称移動は180度の角度で回転させる回転移動と同じになる。回転移動は複素平面の単元でやった希ガス。まぁ、点対称移動と回転移動が一緒になるよってお話は「そうなんだぁ~」ぐらいで。
対称移動が何なのか分かったので、今度は点とか曲線を対称移動させてみる。
まずは、点の対称移動を考える。
対称移動は①\(x\)軸対称②\(y\)軸対称③原点対称の3種類を考える。
とりあえず、座標平面上の適当な位置に、点\((a,b)\)を想定する。
ここから対称移動させていく。
①\(x\)軸対称こんな感じに\(x\)軸で対称移動させると\(y\)座標の符号が反転する。
②\(y\)軸対称
こんな感じに\(y\)軸で対称移動させると\(x\)座標の符号が反転する。
③原点対称
こんな感じに原点で対称移動させると\(x\)、\(y\)座標の両方の符号が反転する。
①\(x\)軸対称\((a,b)\)→\((a,\)\(-b\)\()\)
②\(y\)軸対称\((a,b)\)→\((\)\(-a\)\(,b)\)
③原点対称\((a,b)\)→\((\)\(-a\)\(,\)\(-b\)\()\)
点の対称移動はこんな感じ。
対称となった線とか点から移動前と後とで同じ距離になる。
これらの点の対称移動を踏まえていよいよ2次関数のグラフを対称移動させてみる。
まず、適当な2次関数\(y=ax^2+bx+c\)を想定して、グラフで表される放物線を\(F\)とする。
対称移動は①\(x\)軸対称②\(y\)軸対称③原点対称の3種類を考える。
①\(x\)軸対称
放物線\(F\)を\(x\)軸で対称移動した後の放物線を\(G\)と置いて考える。
線は点が集合したものと考えて、点の移動を放物線の移動に当てはめて、放物線\(G\)の方程式を求める。
放物線\(G\)上の適当な点\(Q(x,y)\)をとると、\(x\)軸での対称移動で点\(Q\)に移動される\(F\)上の点は\(P(x,\)\(-y\)\()\)となる。
点\(P(x,\)\(-y\)\()\)は\(F\)上にあるから\(y=ax^2+bx+c\)の\(y\)を\(-y\)で置き換えたものが\(G\)の方程式となる。
\(y=-ax^2-bx-c\)
こんな感じ。
これで、\(x\)軸で対称移動した放物線の方程式を求めることができた。
②\(y\)軸対称
同じように、放物線\(F\)を\(y\)軸で対称移動した後の放物線を\(G\)と置いて考える。
\(y\)軸で対称移動すると点\((a,b)\)→\((\)\(-a\)\(,b)\)となる。
放物線\(G\)上の適当な点\(Q(x,y)\)をとると、\(y\)軸での対称移動で点\(Q\)に移動される\(F\)上の点は\(P(\)\(-x\)\(,y)\)となる。
点\(P(\)\(-x\)\(,y)\)は\(F\)上にあるから\(y=ax^2+bx+c\)の\(x\)を\(-x\)で置き換えたものが\(G\)の方程式となる。
\(y=ax^2-bx+c\)
こんな感じ。
これで、\(y\)軸で対称移動した放物線の方程式を求めることができた。
③原点対称
またまた同じように、放物線\(F\)を原点で対称移動した後の放物線を\(G\)と置いて考える。
原点で対称移動すると点\((a,b)\)→\((\)\(-a\)\(,\)\(-b\)\()\)となる。
放物線\(G\)上の適当な点\(Q(x,y)\)をとると、\(y\)軸での対称移動で点\(Q\)に移動される\(F\)上の点は\(P(\)\(-x\)\(,\)\(-y\)\()\)となる。
点\(P(\)\(-x\)\(,\)\(-y\)\()\)は\(F\)上にあるから\(y=ax^2+bx+c\)の\(x\)を\(-x\)、\(y\)を\(-y\)で置き換えたものが\(G\)の方程式となる。
\(-y=ax^2-bx+c\)
\(y=-ax^2+bx-c\)
こんな感じ。
これで、原点で対称移動した放物線の方程式を求めることができた。
①\(x\)軸対称:\(y\)→\(-y\)
\(y=-ax^2-bx-c\)
②\(y\)軸対称:\(x\)→\(-x\)
\(y=ax^2-bx+c\)
③原点対称:\(x\)→\(-x\)、\(y\)→\(-y\)
\(y=-ax^2+bx-c\)
2次関数のグラフの対称移動はこんな感じ。
対称移動する前の放物線が第1象限にあるとは限らないけど、式の符号の置き換え方は変わらない。
①\(x\)軸対称:\(y\)→\(-y\)
②\(y\)軸対称:\(x\)→\(-x\)
③原点対称:\(x\)→\(-x\)、\(y\)→\(-y\)
この置き換えだけ覚えていればいいかな。
2次関数のグラフの対称移動のやり方が分かった。
1次関数とか3次関数とかそれ以外の関数でも、式中の\(x\)、\(y\)を置き換えれば対称移動することができる。
もちろん2次関数でもできる。
対称移動する前の関数を\(y=f(x)\)とすると、
①\(x\)軸対称:\(y\)→\(-y\)
\(y=-f(x)\)
②\(y\)軸対称:\(x\)→\(-x\)
\(y=f(-x)\)
③原点対称:\(x\)→\(-x\)、\(y\)→\(-y\)
\(y=-f(-x)\)
って感じに文字を置き換えれば、それぞれ対称移動後の関数を求めることができる。
例題を解きながら2次関数のグラフの対称移動のやり方を確認する。
「置き換え」と「頂点の移動」の2パターン解き方があるから同じ例題で解いてみる。
①\(x\)軸対称:\(y\)→\(-y\) ②\(y\)軸対称:\(x\)→\(-x\) ③原点対称:\(x\)→\(-x\)、\(y\)→\(-y\) と置き換えればそれぞれ求めることができる。
①\(x\)軸対称:\(y\)→\(-y\)
\(y\)を\(-y\)で置き換える。
\(x\)を\(-x\)で置き換える。
\(x\)を\(-x\)、\(y\)を\(-y\)で置き換える。
対称移動後の関数は今までやったやり方の他に、「頂点」と「\(x^2\)の係数」に着目することで求めることができる。
まず、\(y=2x^2+12x+20\)のグラフを考えるために平方式へ式変形させる。
\(y=2x^2+12x+20\)
\(y=2(x^2+6x)+20\)
\(y=2(x^2+6x+9-9)+20\)
\(y=2{(x+3)^2-9}+20\)
\(y=2(x+3)^2-18+20\)
\(y=2(x+3)^2+2\)
これで、頂点の座標が\((-3,2)\)、\(x^2\)の係数はプラスだから下に凸だということが分かった。
グラフに表すとこんな感じ。
①\(x\)軸対称
点対称移動で見たように、\(x\)軸で対称移動すると点\((a,b)\)→\((a,\)\(-b\)\()\)となる。
頂点を\(x\)軸で対称移動すると点\((-3,2)\)→\((-3,\)\(-2\)\()\)となる。
さらに、グラフを\(x\)軸で対称移動させると凸の向きが変わって、上に凸のグラフになる。
頂点\((-3,-2)\)で上に凸のグラフは、
\(y=-2(x+3)^2-2\)
なので、これを展開させると、
\(y=-2(x+3)^2-2\)
\(y=-2(x^2+6x+9)-2\)
\(y=-2x^2-12x-18-2\)
\(y=-2x^2-12x-20\)
となる。
グラフに表すとこんな感じ。
これが\(x\)軸で対称移動させたグラフの2次関数になる。
②\(y\)軸対称
次に\(y\)軸での対称移動を考える。
\(y\)軸で対称移動すると点\((a,b)\)→\((\)\(-a\)\(,b)\)となる。
頂点を\(y\)軸で対称移動すると点\((-3,2)\)→\((\)\(3\)\(,2)\)となる。
グラフを\(y\)軸で対称移動させても凸の向きは変わらず、下に凸のグラフのまま。
頂点\((3,2)\)で下に凸のグラフは、
\(y=2(x-3)^2+2\)
なので、これを展開させると、
\(y=2(x-3)^2+2\)
\(y=2(x^2-6x+9)+2\)
\(y=2x^2-12x+18+2\)
\(y=2x^2-12x+20\)
となる。
グラフに表すとこんな感じ。
これが\(y\)軸で対称移動させたグラフの2次関数になる。
③原点対称
最後に原点での対称移動を考える。
原点で対称移動すると点\((a,b)\)→\((\)\(-a\)\(,\)\(-b\)\()\)となる。
頂点を\(x\)軸で対称移動すると点\((-3,2)\)→\((\)\(3\)\(,\)\(-2\)\()\)となる。
グラフを原点で対称移動させると凸の向きが変わって、上に凸のグラフになる。
頂点\((3,-2)\)で上に凸のグラフは、
\(y=-2(x-3)^2-2\)
なので、これを展開させると、
\(y=-2(x-3)^2-2\)
\(y=-2(x^2-6x+9)-2\)
\(y=-2x^2+12x-18-2\)
\(y=-2x^2+12x-20\)
となる。
グラフに表すとこんな感じ。
これが原点で対称移動させたグラフの2次関数になる。
グラフをまとめると、
こんな感じ。
「2次関数を求めよ。」で式が分かればいいけど、グラフがあれば分かりやすい。
平面の上にある図形の各点を、直線とか点に関して対称な位置に移動させること。「\(x\)軸対称」「\(y\)軸対称」とかの線対称移動、「原点対称」とかの点対称移動がある。 | |
①\(x\)軸対称:\(y\)→\(-y\) ②\(y\)軸対称:\(x\)→\(-x\) ③原点対称:\(x\)→\(-x\)、\(y\)→\(-y\) |
対称移動、意外とややこしや。
グラフをイメージしながらじゃないと間違えやすいかも。
平行移動のときと同じように対称移動の解き方も、「置き換え」と「頂点の移動」の2パターンある。
「置き換え」は、\(x\)軸のときは\(y\)座標、\(y\)軸のときは\(x\)座標の符号が変わるから少しややこしい。
「頂点の移動」は、凸の向きに注意しなきゃいけない。
どっちにしろ、上手くグラフをイメージできるかどうかが大事。
平行移動は「頂点の移動」、対称移動は「置き換え」みたいな覚え方だとちょっと覚えにくい。
どうせなら平行移動も対称移動も「頂点の移動」で統一した方が覚えやすいかも。
ただ、やっぱり「置き換え」で解けるとマジで速い。